Archive for 3月, 2010

中古航空機バーゲンセール | 週刊文春 4月1日号より

by 七色カラス on 3月.25, 2010, under 雑誌

中古航空機バーゲンセール
週刊文春 4月1日号より

まさか書評のブログで、雑誌の記事について投稿するとは思っていなかったけど、ものすごいインパクトを受けたので、書いてみます。

よく、「飛行機の墓場」とか言われて、廃車ならぬ廃棄された飛行機の機体がずらりと並んだ写真を見たことはあるけど、この「中古航空機バーゲンセール」で取り上げられたアメリカのビクタービル空港は、中古車売り場ならぬ中古機売り場なんだそうだ。

ものすごい数の旅客機・貨物機が整然と並んでいる。

世界的な不況で、売りに出される航空機がどんどん増えているのだそうだ。

何ともショッキングな写真と記事でありました。


大きな地図で見る
記事で紹介されていたビクタービル飛行場の中古機売り場
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プレミアム8 伝統芸能の若き獅子たち – 茂山宗彦

by 七色カラス on 3月.23, 2010, under TV番組(ドキュメンタリー・教養)

プレミアム8<文化・芸術> シリーズ伝統芸能の若き獅子たち – 茂山宗彦
NHK BS hi 2010年3月22日 放送

茂山宗彦
いまこそ狂言師の賭け時
狂言師 茂山宗彦(しげやま もとひこ)さんの挑戦を描いたドキュメンタリー。 茂山宗彦さんは、芸歴30年を契機に狂言の中でも最も難しい「花子(はなご)」に挑んだ。 伝統の技を引き継ぎ、自分の個性を出そうと必死にもがく500日間を追った。

茂山宗彦さんと言えば、NHKの朝ドラ ちりとてちん』での徒然亭小草若が思い浮かびます。 このプレミアム8の冒頭でも、『ちりとてちん』の映像が紹介されていて懐かしかった。

今まで狂言を観たことはなかったけど、この番組で、茂山宗彦さんの日常と、狂言師という職業に打ち込む姿がすごくバランスよく描かれていて、いい番組を観たなぁという感想です。

狂言の舞台も見に行きたくなりました。

凄いなと思ったのは、「仕事を家に持ち込まない」という姿勢。 「仕事を家に持ち込まない」というのは、サラリーマンでもよく言う人がいるけど、茂山さんの場合、その言葉を実践するために、一人で稽古するときは、鴨川のほとり(つまり屋外)で、謡の稽古をしているのでした。

それと、びっくりしたのは、宗彦さんの父・茂山七五三(しげやま しめ)さんは、40歳まで、銀行員として働きながら狂言をやっていたんだそうです。 今ほど狂言に人気がなくて、狂言だけでは食べていけなかったんだそうです。

茂山宗彦さんが、朝ドラ『ちりとてちん』のなかで、「俺ら、若いもんはTVの仕事がなかったら、落語だけでは食っていけんのや」というような徒然亭小草若のセリフがありましたが、まさにそのまんまです。

番組では、茂山さんの日常、狂言の稽古、舞台公演の様子、「花子」という最も難しいといわれる演目に挑む500日が、非常にバランスよく描かれていて、面白かった。

面白かったといえば、番組中で、茂山宗彦さんの2回目の結婚式の様子が流れていましたが、夫婦の誓いの場面で、「この方(宗彦さん)は、数年前に神への誓いを守れませんでした。それでもあんたはんは…」と新婦に問うという、結婚式まで”笑い”にしてしまう。 素晴らしいですね。

いい番組でした。

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穴のあいた大風呂敷、後藤象二郎 「竜馬がゆく」より

by 七色カラス on 3月.21, 2010, under 司馬遼太郎, 歴史、時代小説

「竜馬がゆく」 司馬遼太郎 著 より、後藤象二郎という人物の描き方を通して、司馬遼太郎氏の「竜馬がゆく」のスポット的書評を書いてみます。

この後藤象二郎という人物の評価は、後藤象二郎 – Wikipedia などをみると、一方では幕末の雄とされ、一方では「将来の総理大臣(武市半平太)を殺した者」という悪評もあって、評価は大きく分かれる。

その後藤象二郎という人物が、小説「竜馬がゆく」で活躍し始めるのは、物語も終盤、土佐藩が坂本龍馬を支援する方向に転換し、龍馬が海援隊を組織するあたりから。

小説の中で、後藤象二郎は「穴のあいた大風呂敷」と表現されている。 つまり、言においては、大風呂敷を広げて、大いに景気のいい気勢をあげるが、その行動においては、大雑把で、広げた大風呂敷の大きな穴に、皆はめられてしまうような、そんな人物として描かれている。

例えば、外国商人から、洋式船、軍艦、洋式銃などを購入するときには、気前よく高値で大量に買い付けるようなことをし、手付金を支払ってあとは支払わない。それどころか、それらの支払いに当てるべき藩の金の大半を酒と芸者遊びにつぎ込んでしまうようなことをする。

さらには、その負債の整理は、長崎留守居役(土佐商会の長)に自らが抜擢した岩崎弥太郎に全部ひっかぶせる。弥太郎も大風呂敷の大穴にはめられた一人だ。

それでいて、駆け引きにはめっぽう強くて、柔硬変幻。 また、佐幕派の土佐藩にあって、かつては尊皇攘夷派の武市半平太ら土佐勤王党を弾圧した張本人でありながらも、最終的には、尊王、開化論の思想に方向転換し、明治維新に貢献することになる。

ここに書いたのは、あくまで小説「竜馬がゆく」で読んだ後藤象二郎という人物についての印象だ。 司馬遼太郎氏の人物の描き方に惹き込まれてしまうと、後藤象二郎という、評価が大きく分かれる人物が、大胆不敵でひどく魅力的に思えてしまう。

司馬遼太郎氏の人物の描き方というのが、その人物を小説の中でいかに魅力的に演じさせるか、そして、いかに読み手の側に強烈なインパクトを与えるかという点で、小説「竜馬がゆく」の面白さの一因でもあり、司馬遼太郎氏の小説の魅力の大きな要素なのだと思う。


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ゲゲゲの女房

by 七色カラス on 3月.13, 2010, under 自伝・エッセイ

ゲゲゲの女房
人生は…終わりよければ、すべてよし!!
武良 布枝(むら ぬのえ)著、 2008年3月 実業之日本社

2010年4月スタート(3月29日放送開始)のNHK朝ドラ『ゲゲゲの女房』の原作。

「ゲゲゲの鬼太郎」の作者・水木しげるさんの奥様・武良 布枝(むら ぬのえ)さんの自伝。

島根県 安来(やすぎ)市 生まれ育った布枝さんが、子供のころ、おばあちゃんから色々な怖いお話をしてもらうあたりから物語は始まる。

大人になって、目と鼻の先ともいえる鳥取県境港市出身の売れない漫画家 水木しげるさんとお見合い結婚する。

お見合いから、わずか5日で結婚式というスピード結婚。

当時のエピソードを水木しげる氏ご自身が描いた漫画(他の本で刊行されたものなど)が、そこかしこに差し込まれていて、思わず笑ってしまう。

ゆったりとした語るような文章で、水木しげるさんと奥様の、当時のエピソードが目に浮かぶよう。

特に『ゲゲゲの鬼太郎』がヒットする以前の極貧生活を、時に涙を流しつつ、時に水木さん流 極貧の楽しみ方に一緒にはまって熱中してしまったり、つらい生活の中でも、仲むつまじい夫婦の生き様がほっこりと描かれている。

この書評ブログを書いている私自身からすると、水木さん夫妻が、ちょうど私の両親の世代と大体同じなので、うちの両親が結婚した当時もこんなだったんだろうか?とか。あ、そうそう、自分が子供の頃も、そんなことあったよなぁ、などと懐かしく感じる場面もありました。

それに、「ゲゲゲの鬼太郎」のことはテレビアニメで観て知っていましたけれども、水木しげるさんやご家族のことはほとんど知らないわけですから、この本を読んで、奥様や水木さんのご苦労をたくさん知りました。楽しいエピソードもたくさん知りました。

「あぁ、これは朝ドラにもなるわいな」とも実感しました。

そして、貧乏だろうが、豊かだろうが、大事なものは何なのか、ということも少しわかったような気がします。

また、読み進むうちに、この場面は、朝ドラ主役の松下奈緒さんはどうゆう風に演じるのだろうか? とか考えて、楽しみになりました。

読みやすくて、すーっと読めてしまう作品。

【おまけ】挿入されている水木しげるさんの作品の一部
水木しげるさん自身による自伝マンガ
ボクの一生はゲゲゲの楽園だ〈1〉―マンガ水木しげる自叙伝

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失われた20年

by 七色カラス on 3月.07, 2010, under 政治・経済・経営

失われた20年
朝日新聞「変転経済」取材班 編, 岩波書店, 2009年2月 発行

2007年5月~2008年5月までの1年間、朝日新聞の経済面に連載した「変転経済-証言でたどる同時代史(計48回)」の約半分を選んで加筆し、2008年秋以降の動きを新たに書き下ろしたもの。

失われた20年の節目節目の事件や出来事を、政治家や官僚など、当時のキーパーソンが何を思いどう動いていたのか、ドキュメンタリータッチで、関係者の証言を交えて、時々刻々と伝える形式なので、流れがつかみやすい。

失われた20年のキーとなるそれぞれのエピソードで、当事者の受けた衝撃がよく伝わってくる。

まるで、

  • 幕末のペリー来航と開国
  • 太平洋戦争敗戦とGHQ主導による復興

を時代を変えて読んでいるような印象を受けた。

ただ、違うのは、現代の日本が、いまだ「明治維新」や「戦後復興から高度経済成長」に相当するポジティブな転換を見出せていないところ。

あるいは、非常によい戦略、施策を実行寸前で思いもよらぬファクターによって転換に失敗しているところ。

「この事件が起きたときには、自分はあの仕事をしていたな」などと思い起こしながら、読み進むと、あの時、あの時代に、金融や世界市場の裏舞台でこんな出来事が起きていたのかと、改めて、自分の無知を思い知らされた。

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