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“はやぶさ” 快挙はなぜ実現したか~追跡 A to Z (NHK)
by ごみ箱カラス on 8月.29, 2010, under TV番組(ドキュメンタリー・教養)
“はやぶさ” 快挙はなぜ実現したか
NHK総合 2010年 8月28日放送
再放送予定: NHK総合 9月1日(水)午前1時05分~ (火曜深夜)
※沖縄のみ放送がありません。
2003年5月に打ち上げられ、60億Km 7年 の旅を終え、2010年6月13日、地球に大気圏再突入・帰還した 探査機 はやぶさ の奇跡の帰還の裏舞台を追跡したドキュメンタリー。
今回の番組では、探査機 はやぶさ の技術的側面を追いながら、かつ、JAXAはやぶさチームの組織マネジメント、プロジェクト・マネジメントにも焦点をあてていたのが素晴らしい。
イトカワ着陸(接地)とサンプル採集の予想外の展開、燃料漏れ、姿勢制御不能、行方不明(通信断絶)、イオン・エンジンの寿命と起死回生の回路組み換えによる復旧、そして地球への帰還。 それぞれの危機的場面での、技術的な真相、裏舞台・秘蔵映像を軸に、組織マネジメント、「あきらめない」という姿勢 を伝えた良い番組だったと思う。
探査機はやぶさチームの組織マネジメント面で、印象に残ったのは、
- 具体的な数値・確率を示して、組織に希望と方向性を与えたこと
→ 通信断絶(行方不明)時に、確率を完全に計算し、1年間はやぶさ からの電波を探索し続ければ、発見できる確率は約60%
→ 「イトカワの砂の採取ができていない可能性が高い」とみられていたときに、イトカワの重力と真空の環境を作り出せる装置で実験し、接地後100秒あれば、イトカワの砂が採取できると検証 - 太陽風を利用した姿勢制御の回復や、イオン・エンジンの回路の組み換えによるエンジン復旧 などに代表されるアイデアの競い合い で危機を乗り越えたこと
→ 複数のメーカーや、JAXA等の組織が参加してひとつのチームを作っているような場合、「技術的アイデアの競い合い」という、ある意味、自由な発想を許すプロジェクト・マネジメントは非常に難しいにもかかわらず
単なる科学技術論ではなく、プロジェクト・マネジメント、組織論にまで踏み込んでいた。
そして、番組終盤の大気圏再突入の映像、何度見ても感動的な映像だけど、ここでも驚きの秘話が紹介されていた。
NASAアメリカ航空宇宙局が、将来の火星往復飛行などの太陽系大航海時代に役立てるデータとして、探査機 はやぶさ の大気圏再突入の模様を撮影していたという。 「すんごい」と思った。
大気圏再突入技術は、ロシア(旧・ソ連)やアメリカが世界をリードしてきた技術で、大陸間弾道弾ミサイルの核弾頭再突入技術に応用できることから、技術のノウハウが公開されおらず、日本独自にゼロから開発しなければならない技術だった。 NASAからみれば、日本の技術なんて赤ん坊のよちよち歩きぐらいのものだという気がしていたのだけど、その日本の探査機の大気圏再突入の模様を、NASAが単なる記録映像としてではなく、将来の惑星間往復飛行に役立てるためのデータとして撮影していたという。
まさに、裏舞台。 NHKならではの秘話の放送だった。
ところで、番組内容そのものからはそれるけど、「追跡! A to Z」では、「プロジェクトX」から継承されている 「言い切り型のナレーション」 を使っている。 「彼は、○○ と思った」、「xx だった」、「○○○ だ」 という形式のナレーション、大嫌い なんだけど、今回に限っては、気にならなかった。
さらに、余談、ナレーションで印象が良かったのは、2010年前半に放送された 「巨大地震 MEGAQUAKE」シリーズ での、伊武雅刀さんのナレーション。 「彼は、○○と感じたそうです」、「○○なのです」、「○○○しました」、 という形式のナレーションは、伊武雅刀さんの特徴的な声質も影響してか、非常に印象が良かった。
探査機はやぶさ、涙の帰還